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#自創作アーカイブ
おそらく保存してるメモの中で一番多い「ワールドウォーズ」のものもついでに載せときます。誰得? 昼編より、「コスモが天門学園に転入するお話」の冒頭です。だいぶ昔から温めてたネタなのに、書くの諦めてて悲しい。ワウォ昼編の楽しいところは、私の創作人生における最愛カプが惜しみなく書ける点です! この話でも滲み出てます。

「そう、これはある種の試験……みたいなものだと思ってくれていい」

「我が天門学園の窓口は広く大きく…何者であっても受け入れる、そう自負しているけれど……かといって、誰でも彼でもホイホイと入れているわけでは無いんだよ?」

「君がこれからこの学園でやっていけるのか。我々にとって、面白い……おっと失礼」
「君にとって有意義な時間を過ごせる場所であるのか。それを試しているんだということを念頭にさえ置いておけば、きっと幸運は君を助けてくれる」

「さあ、肩の力を抜いて。試験開始だよ」



***



 ジワジワと、セミの声が響く校舎内。
 働きの割に全く予算の降りない生徒会室では、全面ガラス張りのやたらお洒落な室内とは裏腹の混沌具合を見せていた。

「暑い…………」

 ポツリと、生徒会書記のオルンが呟く。
 それは、徹底的に我慢していた一言であり、漏らしてしまうのにこの上なく適任なのも、彼しかいない一言だった。
 ギシギシと音を立てる扇風機よりも大きな声で、生徒会副会長が声を上げる。

「オルンくん! その言葉はNGワードに設定したはずだ! 君が忘れるはずあるまい!」

 クリスは持っていたシャーペンの芯をポキリと折ると、途端に吹き出す汗を拭う。

「ああ、ほら、汗が出てきた! “暑いと思わなければ暑くない”理論が崩れたんだ、君のせいだぞ!」
「クリス……無謀なことはやめよう。暑いものは暑いよ。僕はもう限界だ、リタイアする」

 オルンは無理無理、と言ったそぶりを見せたあと、湿気でベコベコになっている団扇で微かな風をパタパタと仰ぎ始める。

「君の根性論に助けられることも多々あるけれど、自然が相手じゃやってられないよ。……そっちはどれくらい進んだ?」
「くう……!! 3分の2だよ! クソ会長の分も合わせてね! 我ながらグッジョブとしか言えない成果さ……!」
「凄いじゃない。もう今日はそれで終わりでいいんじゃないかな」

 窓を全開にしていくクリスに対してオルンは首を振る。

「君は些か完璧主義すぎるよ」
「わかっているとも……! 大体、教室にはクーラーが完備されているのに、ここ、この生徒会室のクーラーだけピンポイントで故障しているという今回の“設定”がおかしいんだ! そんな中でも主義を曲げられない私は……なんて不器用なんだろうね!」
「何に怒ってるのさ……もうやめよう、こんな非生産的なこと。僕たち、夏休みに登校している優良生徒なんだから、誰にも文句は言わせないよ」

 死にかけのセミの声に合わせ“生徒会長”のテーブルを蹴り続けるクリスをよそに、オルンはとっとと自分の仕事を止め、後片付けを始める。
 いつも通りの夏休みの1日、生徒会室の惨憺たる有様…そこに、助けを叫ぶ声が響くのも、いつものこと。

「ねぇ、副会長! 会計でも書記でも庶務でもいいわ! 誰かいないの!?」

 答える間も無く、バン! と生徒会室の扉が開かれる。そこに立っていたのは、クリスとオルンと同じか、それ以上に汗をかいている…真っ白な少女だった。

「君は……想くん、か?」
 クリスがそういうと想は「天冥寺がひとり、名前は想よ! その通りよ! ってか、オルンもいるんじゃないの!」と言葉を続ける。
「あんたたち2人しかいないの?ねえ、指揮官は? くそ兄貴は元から期待してないけど、指揮官もいたりしない?!」
「残念だけど……今日、生徒会室に居るのは僕たちだけだね」オルンは淡々と言う。「指揮官殿は、今日は執事ロボットと街へ遊びに行くって聞いたけど」
「もお! あのヘタレ指揮官ってば、肝心な時にいないのね!? というか、なんでこの部屋こんなに暑いのよ!」

 想はずけずけ踏み込みながらまくし立てる。
 クリスも会長の机を蹴るのをやめ、「明日太くんだって羽根を伸ばしたいときがあるってことさ。……で、用件は?」と、自分以上に興奮している想を見て落ち着いたのか、彼女らしい声音で尋ねた。

「そうよ、大変なの! オルン、あんた絶対慌てるわよ……!」
「はは、それは御大層な。隕石でも降ってきたのかな」

 他人事のように笑うオルンに想は地団駄を踏む。そして、こう言い切ろうとして……

「あのね!! コスモがなんでかわかんないけど、グラウンドのど真ん中で倒れてたの!しかも、」

 言い終わる前に、血相を変えたオルンが生徒会室を飛び出して行ったのだった。

「だから言ったじゃない……大変なことが起こったって! あのバカ〜!!」

 慌てて後を追う想。嵐が去った後のような生徒会室で、ひとり置き去りにされたクリスの耳に、突如エアコンの起動音が響く。どうやら都合よく直ったようだ。

「……つまりは今回の案件、“私たち”ではなく、“彼らの”担当というわけだ。わかりやすくて助かるね、……とでもいうと思ったか」

 クリスは取り敢えず手近にあった生徒会長の隠していたお菓子を無造作に口に入れると、窓を閉め、仕事に戻るのだった。

「……しかし、何故コスモくんが? 彼女は先日、ホロスコープで母星へ帰った筈じゃ……」



***



「モモちゃん〜、私ですよぅ! 私!」
「しつこいなお前も……落ち着け、スリーズ 」

 オルンがグラウンドに到着する頃には、そこには軽い人だかりができていた。中でも確認できるひとたちの顔は、見知ったものばかりだった……調査団のみんな。それが、否が応でも“彼女”が関係していることを想起させる。
 間をかき分けようとして、生徒会の腕章を探すけど、見つからない。オルンは本当に慌てて生徒会室を飛び出してしまったことを思い出した。
 近づくにつれ、ざわめきが明瞭になっていく。

「もも、ちゃん」
「そうですよぅ、モモちゃんです! 私たち、あなたが倒れてるって聞いて……バイト放り出して、駆けつけたんですからぁ!」
「おい、あんまり揺らすな。……団長、いまガッシュのおっさんが保健医を呼びに行ってる。色々こんがらがってるかも知れんが、ここにいるのは、みんなあんたの顔見知りだ」
「顔見知り……」

 言葉通り、学食カフェの制服のままで喚いているのはスリーズ。その隣でトールが、落ち着かせるように彼女に声をかけている。
 泣きじゃくるAI-EST(ロボットなので、涙は出ない)と、彼女の顔を優しく覗き込んでいるのはレオンだ。
 そして、たどたどしいけれど、コスモの返答が聞こえる。

(返事ができない状況じゃないんだ……)

 オルンはあらゆる最悪の状況を想定していたが、その事実にホッと胸を撫で下ろした。

「オルン! やっと追いついたわ!」

 想がパタパタと駆け寄ってきて、彼女の大きな声で見知った友だちが顔を上げる。

「書紀、来てくれたのか」オルンの来訪にトールが彼らしくないホッとした顔を見せる。
「うん……、だけど、まだ詳しい事情は聞けてない。一体、何があったの?」
「わからん。第一発見者はそこのメイドだ」
「……エストはね、きっとまだ喋れない。とてもショックを受けているから。オルン、君が彼女に話しかけてみて。何か変わるかも知れない」
 レオンがそう言う。いつも気まぐれな彼も付き添ってくれているなんて、ただごとじゃないのは事実だった。みんなの反応から、オルンは一つの可能性を懸念していた。「わかった」と頷くと、俯いたままのコスモの前に身を屈める。

「……コスモ?」

 できる限り優しく、声をかける。淡く輝く髪を揺らして、彼女が顔を上げた。瞳にしっかりとオルンを映した、「異星からの探訪者」は、首を傾げてこう言った。

「あなたも……私の、知り合いなの?」

 その瞳には、ありありと混乱の色が映っていた。

「トーち! スリーズチャン! お待たせェ! アーテリーチャン連れてきたよォ!! ……ベインっちは夏季休暇だってェ〜!」
「おいおい……野良ナースの方が来たのか」
「あら、失礼しちゃう。愚弟の代わりに来た、アーテリー先生よぉ。……まあ、あまりおふざけはできないわねぇ。団長ちゃんの様子、見させてちょうだいね」

 あのアーテリーすら、心配そうにコスモのひたいに手を当てている。ぼんやりとした様子を見守る友だちの中で、オルンも覚悟していたけれど……大きく動揺していた。
 想がギュッと、服の裾を握り締める。

「メイドロボが泣いてて……私たち、集まったわ。コスモは……私のことだって、おぼえてない。心を読んでもね、真っ白なの……!」

 そうして、エストにつられるように想も泣き出してしまった。オルンたちは、ただアーテリーがコスモに処置をしていく様子を見ることしかできなかった。



***



「いわゆる、記憶喪失ね……」

 アーテリーは困ったように頬に手を当てる。
 保健室には、オルンと想が付き添いで参加していた。トールとスリーズとガッシュは学食カフェへ戻り、レオンは「エストを落ち着かせるよ」と、そう言っていた。
 コスモは空いている保健室のベッドで、今は静かに眠っている。

「何も覚えていないわけじゃないの。生活に関わる知識は消えていない……自分のことと、私たちのことだけ。綺麗に抜け落ちてたわぁ」
「そんな……」
「……でも、コスモは……」

 想の言葉に、多分オルンもアーテリーも同じことを想像した。そう、彼女はつい先日、スペースシャトル「ホロスコープ123」に乗って、母星への帰路についたはずなのだ。

 よく覚えている。

「ゴシュジンサマ、お体にはどうかお気をつけてください。本当はメイドとして、ワタシもご一緒したいのですが……」
「てへへ……。エストちゃん、大丈夫ですのだ! 私の代わりに明日太先輩のこと、よろしくなのだ!」

 抱きついてくるメイドロボに、嬉しそうに恥ずかしそうに笑うコスモ。

「どーせなら転校すりゃいいのに。変なとこ、カンタンに行かないのよね。このガッコ……」
「ね! 学年別対抗のスマブラ大会とかする暇があったらコスモちゃんの編入認めてほしいよね! そしたら、毎日一緒にゲーセン行って……! ブーマニの極意叩き込んであげるのに!」
「ま、あーしも忘れない限りメッセしたげる。……ぶっちゃけ、異星間で通じるか知らんけど……ねぇコスモ、プロミネンスのこと、忘れんでよね?」
「夕闇ゲーセン通りのことも忘れないでね!」
 フレイヤとフミが名残惜しそうにそう言って、みんなが口々にコスモへ声をかける。

「コスモが帰ったら、屋根裏部屋が寂しくなっちゃうわね……」とパトリシアが呟き。
「次会ったときは、ジャムの子分に加えてやるから……もっとつよくなっとれよ! ……ぐす」となぜか(泣きながら)偉そうなジャム。
「みんな、ありがとなのだ……。夏休みの間だけで、こんなに友だち作れて、私 本当にうれしいですのだ!」
 無言で鼻水をすすりながら、みっちりと腰にまとわりついている想とカルラの頭を撫でながら、コスモは泣き笑いをしていた。
 そう、一夏の話。真昼の大騒動を巡って、いろんなことがあったけれど、色濃く残っている記憶を、彼女が忘れてるはずなんてないんだ。

「オルンくん。いままでたくさん迷惑かけてごめんね。本当にありがとうなのだ……」
「……別に、いいよそんなの……」

 迷惑だなんて、思ってなかったから。
 このときだって僕は、言葉選びが下手くそな自分のことを深く反省したのに。

「忘れてしまっているのは事実よ。団長ちゃん、宇宙人だから、もしかしたら私たちと体の仕組みが違うかも知れないけれど……でも、無理に思い出させようとしちゃダメ。何かのきっかけで、思い出すことがあるかも知れないし、……そのままかもしれないわぁ。こればっかりは、運に頼るしかないわねぇ」

 アーテリーも、とても寂しそうにそう言っていた。結局謎は何一つ解決しないまま、今日は解散という形になったのだ。

「……うん、クリス。今日はありがとう。そういうわけだから、しばらく僕は欠席する」

 オルンはあらかたの事情をクリスに伝えて、スマートフォンの画面を落とした。
 その間も、「団長」の危機を聞いて、今日学校に来ていた調査団のメンバーが代わる代わる保健室に顔を覗かせていた。
 よく、コスモは個性豊かなメンバーたちの中で埋もれていて……「どうしてジブンが団長ですのだ〜!?」と度々弱音を漏らしていた。

(だけど、こんなに心配されてるじゃないか……)

 今も彼女の顔を覗き込む想とカルラ。オルンは首を振ると、思考の切り替えを図る。
 団長不在で、しょげてちゃ仕方ない。これは、ワレらが調査団の解決すべきミッションなのかもしれないんだから。



***



「これだよ! コスモさんが綺麗だって言ってくれたお花。お花さんもあのときはありがとうって、そう言ってる」
「お花……」

 宿もないコスモは、今までと同じようにパトリシアの働くバーの屋根裏部屋に一晩泊まり……翌日、心配して迎えに行ってくれたソラとサーブに連れられて、中庭花壇道に来ていた。もちろん、オルンと想も一緒だ。
 花壇道の手入れを担当するリリアスが優しくそう言う。コスモは少し嬉しそうな顔を見せて、咲き誇る花々を見ていた。

「コスモ、前、お花好きって言ってたもんね。心の中も“きれい!”って言葉で溢れてるわ!」
「あはは、それは良かった」
「……うん、すごくきれい……ですのだ。ありがと、ね……」

 記憶を失っているコスモは、とても落ち着いているように見える。想もリリアスも、寂しさを覚えていたけれど、触れずに「どういたしまして」と明るく返していた。
 サーブがキラキラと鱗粉を散らし、コスモの元へ近づく。

「あの、いまソラくんがお茶を淹れてくれてますから。一緒に飲みましょう、団長さん」
「えと……いいの?」
「もちろん! フローラさんもいてくれたら良かったんだけど。ぼくたち、みんなでよくお茶会したじゃない。たまに団長も来てくれてたんだよ」
「あ……」

 リリアスの何気ない言葉に、コスモが困ったように笑う。「ごめんなさい、なのだ。覚えてないの……」

 紅茶や茶菓子の準備を終えたソラと、リリアスとサーブがコスモを導いてあげるときも、オルンは少し離れた場所でそれを見ていた。
 ……考えろ。みんな、彼女のことを想って行動している。こんなとき、「秀才」と言われた頭がうまく使えなくてどうする。畳む

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