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そういや 昔書いた小話もどきを引き上げました
登場人物はロザリオ(リーリ)・マタン・ルスワール・ラファエルです
マドロミのムーンサイドについては2022年くらいから伏せてるので誰が誰かわからないと思いますが、大体モチーフになったキャラがアーキサイドにいます。

「マタンの方が、ロザリオさまのことが大好きです。よくわかっているのです! それは誰がどう見ても明らか。だってマタンはロザリオさまにお仕えしているんですもの!」

 自信満々にばん、と胸を叩き、鼻息荒く機械仕掛けのメイドが言う。

「あぃぃ……でも、でもあたしも……ロザリオに助けられたんだ……ラビットバレーで、あの時! あたしだってねぇ、ロザリオのこと……あたしなりに気にしてるんだぞ!」

 負けじと体を乗り出して、黄金の羽根を生やした金髪のうさぎ天使が言う。

「……だそうです。どうですか、坊ちゃん」

 機械仕掛けの執事が、端正な顔立ちを愉快そうにゆがめ、主人へおちょくるような声をかける。淡い月の光の色の髪を持つ少年は、大きなため息とともに頭を抱えて……呆れたようにこう言った。

「なんなんだよ、お前たちは!」


 ……機械仕掛けのメイド、彼女の名前はマタンという。日の暖かな光の色をした髪とふわふわのエプロンドレスを身にまとい、大きなガラス玉のような瞳をもつ相貌はとても可憐で愛らしい。だけどその中身はとてもパワフルで、元気いっぱいの少女そのものだ。
 金色の髪をしたうさぎ天使、彼女の名前はラファエルという。結わえるにはやや短い髪をおさげにまとめ、うさぎ天使特有の制服を着ている。明るく無邪気で天真爛漫で、可愛がられやすい性格だ。実際に年上のうさぎ天使たちによく可愛がられている。
 そんなふたりは現在進行形で、ギャスパー博士のラボ──に間借りした一室──で、バチバチと火花を散らしあっていた。「大事な人」をかけて言い争っているのだ。取り合っているのは、月の女神が生み出した、「失敗作」である少年……ロザリオについて。
 マタンと同じような出自を持つ機械仕掛けの執事、ルスワールは顎に手を添え少女たちのキャットファイトに野次を飛ばす。

「いい勝負ですねえ。身内補正を抜いてもマタンは坊ちゃんバカですから」
「ルッ、ルスワール!! バカとはなんです!? マタンはロザリオさまが好きで、好きで、だーいすきなだけです!!」
「ははぁ、それはそれは。ですがラファエルさんも負けていませんよ」
「あぃぃ! は……恥ずかしいこと言わないでよ! あたし、ロザリオ……とリーリのこと、恩人として感謝してるんだ! このメイドみたいに、片方ばっか贔屓してるんじゃない! でも、今日はロザリオに用があるんだ! 譲ってくれたっていいじゃんか!!」
「ちょっっっ!! マタッ、マタンは!! ロザリオさまが一番ですが、リーリさまのことも大好きなんですよ!? 言いがかりはやめなさい!! ちぎってポイしますよっ!!」

 ……頭が痛い。終始こんな状況で、ロザリオは疲れを感じていた。
 大体、なんでマタンはこんなにボクのことが好きなんだ? 何か恩があるとは言っていたが、興味がないので詳しく聞いたことは無かった。きっと、この単純なメイドのことだ……大したことない理由だろう。
 それにラファエルもだ。正直、博士の助手をしているアンジェラ以外、うさぎ天使と特筆すべき交流をした記憶がない。全く知らないわけではないが、いくら考えても彼女が自分を特別に思う経緯がわからない……きっと、こっちも大したことない理由だろう。

「ホントになんなんだ、全く……」

 引き続きロザリオが頭を抱える様を見て、マタンが慌てたように声を上げる。

「ああっ、ロザリオさま! どこか具合が悪いのですか? お薬が足りておりませんでしたかっ!? マタンが寝室までお連れしますよっ!!? ……まさかっ! うさぎ天使さんめ……あなたのせいですか!?」

 思い立つ前に即身体が動くマタンに肩をがくがく揺さぶられると、ラファエルは「あぃぃぃ!!!??」と絶叫し距離を取る。

「あんた手ぇ早すぎるんだい! なんであたしのせいになるのさ!? 大体あたし……あんたたちが居るなんて思いもしなかったよ! なんなら、なにかにつけてあんたがうるさいからロザリオも困ってるんじゃないの?!」
「なんですってえええ!!」

 売り言葉に買い言葉で再び飛びかかろうとするマタンを、慣れた手順でルスワールに羽交い締めにする。暴走しがちな彼女の制御はお手の物と言わんばかりに涼しい顔をするルスワールに牙を剥き、バタバタと暴れるマタン。彼女を尻目に安全が確保されたラファエルはここぞとばかりに胸を張り、機嫌よくしてみせる。そのまま、ロザリオの肩に手を添えた。

「全く女の子らしくないんだから! ふふん、あたしの用事、教えてあげるよ。ラビットバレーの北西、蜃気楼の森。あたしたちの新しい居住区開拓のためにロザリオを借りていこうと思ってね!」
「はあ? ……ああ……アンジェラが、手伝いがどうとか言ってたヤツ……あ、そうか。お前アンジェラの妹分だったのか」
「そうだよ! ……ってか今気づいたの?! あぃ~、そりゃないよ!!」

 ロザリオ(と半身)は、すっかりラファエルを含めるラビットバレーのうさぎ天使たちには気を許していた。女神傘下の他の天使たちはどう思うかは置いておいて、あとからやってきた人間たちと居住区を争った上、負け続きだった彼女たちからはまるで危険性を感じなかったからだ。主人がそんなだからかマタンたちからの印象も同じレベルまで下がってきたようで、いまではマタンとラファエルはすっかり大喧嘩をする仲になっていたのだった。とはいえ、他人の顔を積極的に覚える気のないロザリオにとって、ラファエルはものすごく印象に残っている天使ではないようだった。それに今更気づきショックを受けたラファエルは涙目になっている。形勢逆転、やっと解放されたマタンがテーブルを意味なく強く叩いた。

「ロザリオさまっ! こんなよわよわお天使風情のお話を聞くことなどありません!! だって、今日は……今日こそは、マタンと……おまけにルスワールと! 一緒にお茶をする約束だったではないですか!!!」

 ひっくり返った声で叫ぶマタンの懇願に、眉間に皺を刻みロザリオは目を閉じる。──こっちは確かに約束はしていた、強引にされた形であったけれど──しかし「月の先住民」であるうさぎ天使のラファエルたちの手伝いをすることで稼げる信頼も、聞けるであろう情報もとても貴重なものだ。どちらを取るか真剣に悩みはじめたロザリオに、少女二人が詰め寄る。

「ロザリオさまぁっ! マタン、一生懸命ご奉仕します! ロザリオさまのためにおいしいおいしーいお茶菓子と、お紅茶をご用意したんです! ロザリオさまたちの大好きな! マロンの入った月餅ですよぅ! だから、だからぁ……置いてかないでぇ!!」
「あ、あたしも、あたしも!! ラビットバレーに来たら、つきたてのお餅をたーんと振る舞うよ! ねえ……ロザリオ、あんたが必要だよ、あぃ! 強くて賢いあんたの力が! 前々から約束してたのはあたしも同じなんだからね!!」

 火花が散る音すら聞こえるようだ。あまりの勢いに仰け反るロザリオにそっと耳打ちしたのは、今まで蚊帳の外だったルスワール。

「いやぁ、モテモテですね、坊ちゃん……どうされるんです?」
「……お前、“俺には関係ない”と言わんばかりの顔だな」
「有難きお言葉。実際そうですから……」

 こいつはいつもそうだ──「ご主人」がこんなに理不尽に絡まれてるというのに、助け舟のひとつも出しやしない。いつも愉快そうに、ボクがもみくちゃにされるさまを見ている……。

「ロザリオ。こんな時、ぼくたちの体がふたつあればよかったね」

 裏側でリーリが言う。至ってどうでもよさそうな面が目に浮かぶ。こいつに至っては無関係だから、こんなにのんきにしていられるのだ。
 ぎゅうぎゅうと詰め寄られて──ロザリオは真剣に選ぶことを諦める。ただただ、この場をどうやり過ごすか考えていたのだった。

(2021.08.08 ちょうど四年前に書いたやつ)畳む
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